『4月30日の裏側』

 

―　4月29日

太陽が真上に来ようという時間。

暢は買い物の為に街に出ていた。

足りなくなった食材や、新しい服。それから本屋にも寄った。

 

 

「こんなものかな…」

 

 

一通りの買い物を済ませ、再度買ったものを確認してから家への道を進もうとする。

 

…と、大きな百貨店の横にあるアクセサリーショップが視界に留まった。

あまり煌びやかではないが、ウィンドウ越しに飾られているアクセサリー類は可愛らしいものばかり。

その中に、桜色の小さな玉をあしらったペンダントを見つける。

確か、明日は優理さんの誕生日だったと思い出し、暢は中へと足を進めた。

中も可愛らしく女の子向けに飾りつけがされている。

客も殆どが女性か、もしくはカップル。

当然居づらいと思った暢は、目的を果たして早々に出ようと決め、近くの店員に声をかけた。

「すいません、表に飾られている桜色のペンダントを…」

「はーい！そのペンダントでしたらこちらですね～」

店員独特のテンションの高さに少し圧倒されつつ、案内されれば

少し行ったところのショーケースに、目的のあのペンダントが飾られていた。

「じゃあ、これをプレゼント用に…」

そう言いながら店員に目を向ければ、その店員は異様ににこにこしながらこちらを見ていた。

正直、怖いとすら思ってしまう。

「あ、あの…何か？」

「ふふふふ、彼女さんへのプレゼントですか～？」

「…へ？」

その発言に呆気にとられた。

ショーケースを開けそのペンダントを取り出しながら、なおも店員は続ける。

「きっと喜びますよ！彼女さんも幸せ者ですね～うふふふ♪」

「いや、あの…彼女じゃ…」

誤解を解こうと否定をしてみるも、どの言葉も途中で遮られてしまう。

「照れないでもいいんですよ～！」などと言われて。

結局最後まで話を聞いてもらう事はできず、店員は包装をしに奥へと行ってしまった。

店員とは皆、こういうものだっただろうか…と疑問に思いつつも、思わずこぼしてしまう溜息。

一人になってしまえば店内で大声を出して否定するわけにもいかず、仕方なく口を閉ざした。

「・・・困ったな」

その後、包装を終え戻ってきたものの変わらず怒涛の喋りを繰り出してくる店員。

半ば反論する事を諦めた様子の暢は、全てを苦笑で返す。

受け取り際にペアルックのものをあれやこれやと勧められても、やんわりと断って流していく。

今度こういう場に来る時は、しっかり店員を選ぼうということを教訓にして

暢はやけに気疲れした様子で店を後にした。

―　当日。

談話室のソファに腰掛けながら本を読んでいた暢。

ばたばたと慌しい足音が聞こえ、顔を上げてみればそこには髪を乱した優理が立っていた。

全速力で走ってきたのだろうか…。

 

「あ、あの暢さんっ！！素敵なプレゼント、本当にありがとうございますっ！！」

深々と頭を下げた優理の手には、しっかりと握られたペンダント。

嬉しそうにお礼を言う様子を見れば暢は笑顔で立ち上がり、乱れた髪を手櫛で整えていく。

少しすれば整え終えた髪を満足げに見て、ぽす、と頭に手を置いた。



「優理さんに似合うと思って選んだので、つけているところ今度是非見せてくださいね？」

相手が笑顔で頷く。
その後もう一度お礼を言ってから優理は部屋へと戻っていった。


終わりよければ全て良しか、と思いつつ
幾分か軽くなった心持ちで、暢は再び読みかけの本に視線を落とすのだった。












※たまに無意識にタラシになっている気がする暢。だがしかし彼に下心は無い。
優理さんのPL様は出演許可有難う御座いました！